IE9ピン留め
※ごちゅうい
このお話は、アニメ版「To Heart 〜Remember my Memories〜」を基本設定としていますが、一部PS2版「To Heart2」の設定とキャラクターを使用しています。
また、この前のお話しに当たる「2たす1は∞(無限大)」=前編=、=中編=、=後編=をお読みいただけますと、お話しが繋がるようになっております。
つたないSSではございますが、お楽しみ下さい。



「あかり!あかりー!! 目を覚ましてくれよ。頼むから!」
そんな急にどうしたんだよ、あかり。
「ひろゆきさん、冷静になって下さい。」
冷静に? マルチ何言ってんだよ。こんな状態で冷静に何かなってられるかよ!
「浩之、何してんの! あかりを助けたいと思うなら離れて、治療の邪魔よ。」
邪魔って、何言ってるんだよ、綾香。本気なら相手をするぜ!!
「藤田さん、医師の検診中です。お下がり下さい。」
セリオ、こんな時も…。お前には心がないのか?
「浩之さん、ごめんなさい。」
先輩、なにを…。

綾香とセリオがオレを羽交い締めにし、先輩が”何か”をオレに呑ませた後、オレは意識を徐々に、白い霧の中に失っていった。



To Heart After scenario if? 
     「2たす1は∞(無限大)」   =最終話=



夢を見た。

何もない、真っ白な霧に包まれた、何処か。
そこに、俺は1人立っていた。

静かに泣いていた。

何で泣いているのか、何に泣いているのかも分からず、ただ涙は頬を濡らしていた。

霧は右前方から左後方へ流れていく。

オレの前方に、大きな影が見えてきた。何だろう?

徐々に、霧が晴れてくる。何か大きな物が建っていた。

霧が晴れた時、それは、オレとあかりの実家だった。
太陽の位置から考えて、既に昼過ぎだって言うのに、全く人気を感じなかった。

奥から、人か歩いてきた。
「お、お袋、親父、どうしたって…」
話しかけたオレを、何事もなかったように無視して、親父達は家に入っていく。

また、奥から人が歩いてきた。あかりの両親だった。
そして、道路の真ん中にいるオレに気が付かずに、家へ入っていった。

こ、怖い。
1人である恐怖
世界から拒絶される恐れ

心から祈った。愛する人の名を。
あかり。
あかり!
あかり!あかり!

あかりが目の前立っていた。
オレは、何のためらいもなく抱きしめた時、あかりがささやいた。
そう、囁くように静かに。そして冷気をはらんで。
「浩之ちゃんにとっての、家族って何?」

「はっ!」
「ひろゆきさん!気が付きましたが。随分、うなされていましたが」
「大丈夫だよ、マルチ。それと、ここは何処?」
「来栖川家の客室だそうです。」
「そうだ、あかりは、あかりはどうなったんだ!」
「大丈夫だとセリオさんから連絡がありました。意識も回復されて、精密検査の結果、脳にも異常はないそうです。」
「そっ、そっか。良かった。」
そう言いながら、未だに心は凍てついている。
あの夢の中の、あかりが言った言葉が、オレの心を凍えさせているから。
「もしもし、セリオさんですか? ひろゆきさんが目覚められました。」
そんなマルチの言葉も、聞き取れないぐらいに。

体の痺れもとれ、何とか自分で歩けるようになった頃、あかりの治療も終わったと知らせを受けて、セリオの案内の元、あかりに会いに行った。
「あかり」
オレの大切な愛するお姫様は、まだお休み中だった。
詳しい事情が聞きたいので、先輩や綾香に取り次いで欲しいと、セリオに頼んだのだが、彼女らは、晩餐会という名の立席会議に出席するために、今は取り次ぎが出来ないと言われてしまったのだ。
時計を見ると、夜の9時。
いつもなら、あかりと一緒に、温かい晩餐の時を過ごしているというのに、今は、ただ冷たい時間が流れていくだけ。

「あかり、オレ、大切な物を忘れて来たかもしれない。」
帰ってくる言葉が無いとしても伝えたい。
「あの時に出てきたあかりって、お前の心の中に住むお前じゃないか?」
懺悔かもしれない、懺悔する相手が牧師でなく愛する人の前で。
「やっぱり、お前はオレのことを良く研究してるよ。」
後悔かもしれない。今までの自分に対する。
「あかり、やっぱりお前は『世界で一番の浩之ちゃん研究家』だよ。」
そして、今まで《愛》は、本当の《愛》ではなかった事への。

だから、分かったことがある。だから、それを早く君に伝えたいんだ。

「うーん、ひろゆきちゃん。」
「あかり、ここにいるぞ」
「おはよう、ひろゆきちゃん。」
「もう、夜だ。おそようだ。」
「クス。やっぱり浩之ちゃんは浩之ちゃんだね。」
「ああ、オレは、オレだぜ。でも、今までのオレと今のオレとは違う。」
「えー、浩之ちゃんは浩之ちゃんだよ。ぶっきらぼうで、イジワルさんで、お寝坊さんで、とんでもないこと考えてて、ちょっとエッチで」
「オイオイ、オレそんなに酷いやつか?」
「でも、頼りがいがあって、凄く優しくて、家族を大切にしてくれる人だから。」
「あかり…。」

「でね、そんな浩之ちゃんに神様がプレゼントをしてくれたの。」
「何、それ?」
「うん、3ヶ月なんだって。」
え、ちょっと待て。3ヶ月って何だ?
結婚記念日はもう過ぎたし、誕生日までは…おたがい未だ関係ないな。
3ヶ月、3ヶ月、3ヶ月って、まさか。
「うん、できちゃった。赤ちゃんが出来たんだよ。浩之パパとママの赤ちゃんが。」
「あかり・・・あかり・・・・ありがとう。」
「そんな、浩之パパにかみさ…」
そんな言い訳をする、悪い口は実力行為で、しゃべられないようにしてやる。
長い、そして甘いキスは、あかりにオレの心が、決心が、誠の愛が伝わっただろうか。
お互いの唇がゆっくりと離れ、お互いの愛の雫でできたロープが触れた時、あかりは本当に愛される女性に、そして、母親の顔になっていた。
そして、その瞳に映るオレの顔は、父親の顔、男として家族を守り抜く闘士の顔をしていた。
「さぁ、これから大変だぞ。」
「そうだね。でもそれ以上に大変なのは浩之パパかもしれないね。」
「あー、まずひかりさんの攻撃は凄いだろうなぁ」
「がんばって、パパ。」



END


おまけ
その場に居合わせたのは、当然、マルチとセリオで、2人とも固まっていたのは言うまでもない。
さらに、事の子細は、すべてセリオ経由で芹香と綾香姉妹に伝わったのも、言うまでもない。
当然、社内であろうと、無かろうと、2人のバカップルというか親バカぶりが急上昇したのは必然である。
もちろん、バカ家族ッぷりも絶賛急上昇中であるもの当然である。

おまけ2
会社での綾香の個室の額には「バカは死んでも治らない」の額が飾られたそうである。


本当に終わり。



これまで、駄文をお読み頂き有り難うございました。
今回のSSに付いては、ネタはある程度、最初から決まっていたのですが、なかなか全体像を描くことが出来ませんでしたが、来栖川綾香女史の大活躍により、何とか形になりました。ありがたや、ありがたや。
To Heartと言う作品は、発売当時にファンの心を鷲づかみにし、多くの同人誌やSSが発表された作品でもあり、既に、続編と続編からのスピンアウト作品が作られており、ある意味既に古く、使い古された作品でもありますが、作品のメッセージは、未だに通じる物ではないかと思います。
この様な形ではありますが、To Heart SSを描くことが出来たことを感謝しております。
最後ではありますが、このSSを読んで頂いた皆様に、感謝を。

# by ka-neru_japan | 2008-10-03 02:51 | SS (To Heartシリーズ)

※ごちゅうい
このお話は、アニメ版「To Heart 〜Remember my Memories〜」を基本設定としていますが、一部PS2版「To Heart2」の設定とキャラクターを使用しています。
また、このお話の前に当たる「2たす1は∞(無限大)」=前編=と=中編=をお読みいただけますと、お話しが繋がるようになっております。
つたないSSではございますが、お楽しみ下さい。



先ほど、HMX-12 Multiによる新感情制御プログラムの研究所内で行う実地試験の行程は全て終わった。
終わってしまった。
そしてそれは、研究所外での実地運用試験の始まりでもあった。
担当責任者は、「藤田 浩之」主任補。つまりオレ。
高校時代と同じ組み合わせ、なんだが…。
今回は違う。
だって、オレ妻帯者だから。あかりがいるから。
超高性能メイドロボにも負けない、そうHM-16シリーズなんて足元にも及ばない、超高性能奥さまがいるんだけど。

「ちきしょう。全部、綾香のせいだ。」

つまり、そういう事である。


To Heart After scenario if? 
     「2たす1は∞(無限大)」   =後編=



「おーいマルチ、マルチ?」
明日から3連休の為か、今日は職員、研究員を含め皆、仕事を早めに切り上げる者が多い。
その為か、いつもの雑然とした雰囲気とは違い、研究所内は、しーんと静まりかえっている。

マルチは、予定より半日早く実地試験が終わり、研究所内で行える試験データの全てを取り終わり、メインコンピューターへのデータ吸い込みも完了したので、家へ連れて帰ろうと捜しているだか、全く見つからない。
あかりと一緒に帰宅したのかと思って、携帯に電話を入れても、留守番電話になるだけ。
仕方がないので、メールを打って置いて、また所内をウロウロ探しているのだが。
「おっかしーなぁ。どうしたんだ。まったく、かったりーなー」

無駄に歩き回って喉が渇いたので、缶コーヒーをチビチビやりながら、休憩所で待ってみた。と、言うか、探し疲れたんだが。
「あれ、浩之。どうしたの?こんな所で。」
「ああ、綾香か。いや、マルチとあかりを捜しているんだけど、全く見つからなくて。」
「で、浩之はそんな情けない顔をして、こんな所でぐだまいているの。全くこのバカップルは。」
綾香、そんなに、嫌そうな顔をしないでくれ。
こっちはさらに落ち込むじゃないか。
やっぱり、あかり分が足らないせいかな。
「そう言えば、メール出していなかった? 昼過ぎに体の調子が悪そうだったから、あかりは先に帰らせたわよ。って。」
は?綾香さん。私(あかりの旦那)、そんな話し聞いてないんですが。
それに、今日はずっとメインコンピュータールームに缶詰になって、端末もさわれずにいたんですが。
だから、出社してから、あかりに一度も会っていないし、昼飯もあかりお手製お弁当が食べられなかったのに。
さらに、それを指示したのは、綾香お前だろぉぉぉぉ!
「ハイハイ、そんなに怒らない。悪かったわよ、もう。マルチは、今まで私の所にいたから、もうそろそろスタッフルームへ来るはずよ。」
「そ、そうなのか。分かった。しかし、何でオレの考えたこと分かった?」
「あのねぇ。全部しゃべっていたわよ、あなた。」
や、やべぇ。またヤッちまったか。綾香、微妙に笑顔が引きつってるし。ここは三十六計逃げるにしかずってね。
「じゃ、今からマルチを迎えに行ってくる。」
「ええ、お願い。後、あかりの体調が良くなったら、電話貰える?」
「どうしたんだ?」
「うん、セリオにね、会わせたいから。それに、姉さんも2人に会いたいって言っていたから。是非来て欲しいの。」
そうか、そう言うヤツだもんな。綾香は。
「分かった、時間はどうする?」
「姉さん、お昼過ぎぐらいまで、仕事のことが色々有るみたいだから、3時ぐらいが良いんだけど。セバスチャンを迎えに行かせるから。」
「OK、わかった。じゃあ、どちらにしても、お昼過ぎに一度電話するよ。」
「わかったわ、じゃ、気を付けてね。」
「ああ、綾香もな。」

少し冷めた缶コーヒーを一気飲みして、オレはマルチを迎えに、ラボの横にあるスタッフロームへ向かった。
体に不釣り合いな大きなバックを持った、マルチが所在なさげに待っていてくれた。
だから、オレは、前から言いたかったことを言ったんだ。
「マルチ、さぁ一緒に家へ帰ろう」ってな。
もちろん、とびきり最高な笑顔で。


「ただいま。あかり大丈夫か?」
「お邪魔します。」
「おかえりなさい、浩之ちゃん、大丈夫だよ。それと、マルチちゃん。ここは、マルチちゃんの家でもあるんだから、ただいまでしょ?」
「あ、あかりさん(・_・、)」
「そうだぞマルチ。今日からここは、俺たち家族の家なんだからな。」
「有り難うございます。浩之さん、あかりさん。」
よかった。
本当に良かった。いつかこんな日が迎えられると信じて、ちょっと無理してローンを組んで買った、この新築マンション。
オレの両親やあかりのご両親にも迷惑は掛けたくないからって、オレとあかりの貯金を叩いて頭金にした時は、
「あなた達は、私たちにとって、ずーっと子供なんだから、偶には甘えなさい。それに、お隣の浩之ちゃんは、小さい時から知っているんだから、今更、格好つけても、格好良くないわよ。」
って、ひかりさんにちょっと怒られたっけ。
でも、俺たちが家族になるためには、やっぱり、家族だけの家が欲しかったんだ。

「あかり、今日、本当に大丈夫だったか?」
「うん、ゴメンね。浩之ちゃん。心配かけて。ちょこっと、貧血気味だったみたいで。で、でも今は大丈夫だよ。」
「うん、ならいいんだけど。辛くなったらすぐ言えよ。」
「ありがとう、浩之ちゃん。」
「あ、あの、浩之さん、あかりさん。遅くなりましたが、ご結婚おめでとうございます。」
「あれ、あかりと結婚したこと、マルチに話したっけ?」
「いいえ、今のお二人に会話を聞いていたら。それと、お二人とも結婚指輪をされてるので。」
あちゃー、またバカップル状態だった訳か。あかりも頬を赤らめてるし。
もう、いい加減なれろよ、あかり。
「あ、明日、昼過ぎから時間空いてるか? 綾香から来栖川家へ招待したいって言付けを頼まれて居るんだけど。来栖川先輩も会いたいって。」
「だ、大丈夫です。」
「うーん、私は…。うん、大丈夫だよ。」
「あかりは…明日の体調見てから決めよう。綾香にもそう言ってあるし。」
「分かったよ。じゃご飯にしよ。今日は頑張ったんだからね。」
「「うわー」」
さすが、あかり。本当にうめー、これだけ凄いのは久しぶりだなぁ。これだけあるのにどんどん食べられるよ。あかり、オレを太らせる気か?
その夜、俺たち家族は、客間に布団を出して川の字になって眠った。
オレは、久しぶりに高校時代の嬉しくてほろ苦い夢を見た。

「相変わらず、呆れるほどでかいなぁ、この屋敷は。」
来栖川家の招待を受け、先輩と綾香とセリオに会いにやって来た。
時間的には、【3時のお茶会】って感じかな。
紅茶とスコーンは本当に美味しかったけど。
しかし、相変わらず先輩は、先輩なんだなー。と、思ったのは出迎えてくれた、黒魔術のマントと帽子を見た時だったのは、秘密だ。
マルチは、セリオを見た瞬間から、ぐずり出すし。
感動過ぎるご対面って、ヤツだったんだろうな。
そんな、気持ちがいい時間がゆっくり流れていたが、楽しい時間って言う物は、あっという間に過ぎ去ってしまう物なんだぁ。

時代物の大きな古時計が、6つの鐘の音を鳴らした。
「もう、こんな時間か、ごめん、先輩、綾香、セリオ、もうそろそろお暇するよ」
「えーイイじゃない、夕食ぐらい食べていきなさいって。誰も迷惑なんかじゃないし」
「ごめんなさい綾香さん、今晩は浩之ちゃんの実家に行くから。」
「あーそう。あの件?」
「う、うんその事もあるけど。やっぱりマルチちゃんを『新しい家族です』って紹介したいから。」
手を合わせて、来栖川姉妹に【ごめん!】って謝っているけど、先輩ちょっと悲しげだな。
ホント、ごめんよ。
「だから、また今度でもいいかな?」
「あかりがそう言うなら、まぁ、良いわよ。」
「ごめんなさい、く・る・す…」

バタン!

その時、何が起こったのか分からなかった。
さっきまで、普通に話しをしていた、あかりが倒れた。
「あ、あかりー!!」
駆け寄って、抱き寄せようとした時、先輩に止められた。
もし、頭を強打している場合は、動かしてはいけないと。

そこから先は、覚えがない。
ただ、取り乱す綾香とは対照的に、先輩は来栖川家お抱え医療チームを呼ぶために、電話を掛けていた。



つづく


終わりませんでした。
あちゃーやってもーたー。本当は、終わらせるはずだったんですよ。その為に、マルチとセリオの感動の対面シーンとか、色々すっ飛ばしたんですが。
文才のなさですね。まぁ、計画性がないとも言いますが。
えー次回で完全に、本当に終わらせますので。
今暫く、駄文にお付き合いの程を。
次回、最終話で

# by ka-neru_japan | 2008-10-03 01:12 | SS (To Heartシリーズ)

※ごちゅうい
このお話は、アニメ版「To Heart 〜Remember my Memories〜」を基本設定としていますが、一部PS2版「To Heart2」の設定とキャラクターを使用しています。
つたないSSではございますが、お楽しみ下さい。また、このお話の導入部に当たる「2たす1は∞(無限大)」=前編=をお読みいただけますと、お話しが繋がるようになっております。
つたないSSではございますが、お楽しみ下さい。




「ひろゆきさ~ん!」
マルチが、マルチが帰ってきた。起きてくれた。
約束は果たせたんだ。
「ひろゆきさ~ん 危ないです~っ!」
そう、あの日から、時間はかかってしまったけれど、やっと、やっと。
「ひろゆきちゃ~ん、危ないよぉ!」
実際、危ない時もあった。けれど、オレとあかりと…、いや、チーム全員の力が結集したからこそ、危険をも乗り越えることができたん《ゴン》くぁwせdrftgyふじこlp
「あーもう、危ないよ!って、言ったのに。」
「た、ひろゆきさ~ん、だ、大丈夫ですかぁ!」
「マルチ、だ、大丈夫、大丈夫。ちょっと頭打っただけだから。」
「浩之ちゃん、大丈夫? 額、赤くなっているから、これでまず冷やそう?」
やっぱり、あかりだなぁ~。
すぐにハンカチを水で冷やして、持ってきてくれるんだから。
「浩之ちゃん、最近変だよ?大丈夫。」
どうやら、マルチが長い眠りから覚めてから、あかりが見てもオレは変らしい。


To Heart After scenario if? 
     「2たす1は∞(無限大)」   =中編=



マルチが目覚めたあの日から、半月続いている新感情制御プログラムの実地試験の行程は、順調に進み、明日には全行程が終わる予定だ。
これも、現在研究中の基幹システムD・I・Aのお陰。その開発者、姫百合珊瑚ちゃんを紹介された時は、流石のオレでも驚いたが。
その後は、研究施設外での実地運用試験となるのだが、長瀬主任に聞いた所によると、前回と同様な試験を行いたいとの事だが、その件に関してはD・I・Aのサポートがない状態での運用になるため、研究所上層部判断になるとの事で、未だ、白紙状態との事だそうだ。
「うーん、おかしいなぁ。」
「今まで、来栖川の研究所でHMシリーズ関連の実験で、こんなにゴタゴタしたこと無かったのになぁ。」

そう、来栖川グループの中心企業である、来栖川重工のエレクトロニクス研究部門であり、来栖川家令嬢の綾香が部長職を勤める部門である、HM研究部門。
ここは責任者の綾香の性格を反映したのか、他の部署とは違い、経営判断が非常に速い。また、研究現場にもある程度の裁量権が与えられているので、オレの所属するグループは長瀬主任が決定権を持っている。実地運用試験程度であれば、既に決まっていてもおかしくない時期なのに?
事務関係の担当をしているあかりに聞いても、引きつった笑顔で、
「うーん、知らないよ?」
と、返されるばかりだし、肝心のマルチに聞いても、
「私は学習型なので、事前に教えて頂いてもセリオさんのようにはできませんので…。だから、教えて頂いていないんです。」
と、愛らしい瞳でオレを見つめながら、話してくれた。
 (その後、頭をなでなでしたのは、ナイショだ。)

そんな事を考えながら、黙々と仕事をこなしていって、今日の業務は全て終了。
長瀬主任は、奥の事務室へ、他の同僚達は
「おっ、おつかれ。」
「お疲れさまっす。」
と、相変わらず、先輩、後輩の区別が無い、この研究室らしい挨拶を交わしながら、研究室を後にしていった。
オレはと言うと、コンコンと、硬質ガラスを叩いて、調整台に寝ているマルチに言葉を掛け、
「マルチ、お疲れ。」
「浩之さんも、お疲れさまです。」
「いよいよ明日の運用試験で、施設内で出来る試験は、終わりだな。」
「はい、これも全て浩之さんと研究員の皆さんのおかげです。」
「違うぜ、マルチ。マルチはみんなの娘なんだから、お父さんやお母さんが頑張るのは当然だろ。」
「浩之さん…。」
「それに、藍原さんやフィールが遺してくれた、大切な、命をかけたデータがある。」
「……。」
暗く落ち込み始めた、マルチの頭をなでなでしながら、
「そんなに暗い顔するな、な。」
と、オレの友人兼娘のご機嫌を取った。
「しっかしD・I・Aってのは、すげーなぁ。研究員のオレが言うのもおかしな話しだけど、あれで組み上がるHMX-17を早く見てみたいもんだな。」
「はい。私も見てみたいです。私の記憶の一部を受け継いでいるかもしれない、妹たちに。」
「そうだな。でもその前に、お前の本当の妹に会わせてやりたいな。」
「え?ほんとうの妹…ですか?」
あ、忘れてるのか?
おーい、ここの責任者の家で秘書をしている、セリオさーん。ここに駄目っ子なお姉さんが居ますよぉ
あ、マルチが本当に悩んでいる。考えてるなぁ。うーん、ホント相変わらずなんだな。
「セリオだよ。」
「え、セリオさんって、あの時のセリオさんですか?」
「そうだよ。」
「セリオさん…。」
「本当なら、データを吸い取った後、解体されるはずだったセリオを『私の友人になにするの!』って言って綾香が買い取ったんだよ。」
「え、綾香さんが!?」
「ああ、今、綾香の実家で綾香の秘書をしてるよ。な、会いたいだろ?」
「はい、会いたいです。そして色々お話しがしたいです。」
「よし、じゃそろそろ、充電するか。」
「あ、… 浩之さん、う、後ろ。」
えー、何でここに、この時間に綾香がいるんだよ。
ってその拳は何でしょうか。く、来栖川部長???
「浩之、なにをマルチに話してるの?」
「ナンノコトデショウカ」
「後、その汗と震えはどういう事?」
お、お前が、今のお前が言うか。上着を脱いで、ヒールを脱いだお前が。
その動きやすい格好と、ふ、フットワークを効かせた、足はナンデショウカ?
「来栖川部長、お疲れさまです。」
な、長瀬主任。有り難うございますぅ。綾香の怒気をそらせてくれて。
「あ、長瀬主任、例の件で捜していたの、ちょうど良かったわ。」
「決まりましたか、助かりました。」
「ええ、たった今、正式決定したわ。」
「で、どこで?」
「以前に経験があって、現在所有していなくて、外部に情報が漏れないと言ったら、やっぱりここしかないでしょ。」
「やっぱりそうですか。」
えーっと、なんだか雲行きが怪しいんですが。
それと、長瀬主任。何でオレを見つめるんでしょうか。綾香は何でにんまりとしているんでしょうか。
「それに、もう既に、家族の方からは承諾も受けていますから。」
「そうですか。それならいいですね。」
え、な、ナンデショウカ。
今、凄く本能が、ここから逃げることを推奨しているんですが。
早くこの場を去りたいのに、何故体は動かないのでしょうか。ああっ女神さまっ!

「藤田 浩之さん」
会社の上司としての綾香の鋭い視線と声に、ピンッと背筋を伸ばしてしまうオレ。
「は、はい。」
「貴方には、明後日からHMX-12 Multiの実地運用試験の担当責任者になって頂きます。」
「は、はい?」
「それに伴い、主任補に昇進してもらいます。この人事発令は明日、発令されますので、発令までは内定扱いとなります。」
「…」
「返事は? 藤田 浩之主任補 さん」
「は、はい。」
おーい、綾香さん。これは一体どういう事でしょうか?
教えてください。
「だから、明日からマルチを連れて帰ってね。あかりにも了承貰っているから。」
な、なんですとー!
た、確かに綾香は言っていた。
…以前に経験があって、現在所有していなくて、外部に情報が漏れないと言ったら、やっぱりここしかないでしょ。って。
それにあかりの行動も、おかしかったし。
…引きつった笑顔で、うーん、知らないよ?って言っていたなぁ。

そうか、そうだったのか。
それで、やったらとイイ笑顔を綾香はしているのか。
「よろしくね、浩之!」
しかも、黒い尻尾まで見えるぞ。



さーて、まだ事務所にあかりいるよな。連行いや、一緒に帰るか。
今晩は、ちょっと…「お話」…しようか…あかり
「ごめんなさーい、ひろゆきちゃーん!」



つづく


あとがき
えー、済みません。済みません。済みません。いろんな意味でスミマセン。
ジャンピング土下座であやまります。SLB撃たないでぇ。qあwせdrftgyふじこlp

かなり今回は、お馬鹿なSSになってしまいました。でもマルチいっぱい出たから良し。あかりは出番ほとんど無かったのは、仕様です。w
綾香が予定以上に活躍しているのは、作者が来栖川スキーなので、まぁ、仕方がないと。お話しは、あと1回で終わる予定です。
駄文ではございますが、最後までお付き合いいただけると幸いです。
では、続きのSSで。

# by ka-neru_japan | 2008-10-02 22:53 | SS (To Heartシリーズ)

※ごちゅうい
このお話は、アニメ版「To Heart 〜Remember my Memories〜」を基本設定としていますが、一部PS2版「To Heart2」の設定とキャラクターを使用しています。
つたないSSではございますが、お楽しみ下さい。


「・・・ちゃん、・・・きちゃん、起きてよ。」

なんだ、何だ? 人か気持ちよく寝てるのに。
昨日も、残業で遅かったんだ。勘弁してくれよぉ。

「・ろゆきちゃん、もう時間だよ?」

今度は、体かグラクラ揺れてるぞ。地震か?
まぁ、これぐらいならイイか……。
それになんだか気持ちがいいし。

「もう、浩之ちゃんってばぁ、起きてよ。」
「へ? あ。 お、おはよう。あかり。」
「おはよう、浩之ちゃん。朝食の準備が出来ているから、顔洗ったらごはんたべよ。」
「ああ、分かった。毎朝、ありがとな。あかり。」
「う、うん。」
「あとな、もうそろそろ、その『浩之ちゃん』は止めないか? ママ。」

そう、あの桜の舞う卒業式の日に立てた聖なる誓いを、オレは、俺たちは実現したのだから…。


To Heart After scenario if? 
     「2たす1は∞(無限大)」   =前編=


『ボッ!』
そんな音は聞こえてきそうなぐらい、顔を真っ赤に染め無くてもいいだろ?
確かに、俺たちはカテゴリー的には新婚さんだけど、高校の卒業式に事実上のプロポーズをして、恋人期間イコール婚約者だったんだから。それを含めたらもう何年になるんだっけ?
「///も、もう、浩之ちゃん、からかうと朝ご飯抜きだからね、先に待ってるよ。」
そんなことを言いながら、キッチンへ向かうあかりだけど、全く、動揺しやがって。
右手と、右足が当時に出てるぞ、転ぶなよぉ~。
などと、朝からバカップルな事を考えつつ、顔を洗いに行った。

今、オレとあかりは来栖川重工株式会社 HM研究所に勤務している。
オレは主に来栖川エレクトロニクスが販売してきた、旧HMシリーズと今後のHMシリーズに搭載を予定している、感情制御プログラムの修正と開発に携わっている。
あかりは、オレが携わっているチームの事務と、試験感情プログラムの育成を担当していた。
そう、俺たちは、あの雨の降る夜に、長い眠りについてしまったマルチが、安心して起きられるように、その為の仕事に就いた。
そして、マルチが気が付かせてくれた、マルチが固く結んでぐれた、あかりとの絆を、俺たちは永遠の証として、昨年結婚した。
「社内一のバカップルがようやく結婚したわねぇ~」などと、一応、結婚の報告をした時に、上役である来栖川綾香取締役部長がからかってくれたが、何せ、長瀬主任を始め殆どの同僚に、バカップル認定されていたので、そう言われても、苦笑しか出来なかったのが残念だ。
今なら、嫌みの1つも返してやるのに。
そんなこんなで、結婚してからも、マルチのために行っている作業も行っていたので、帰宅が深夜だったり、休日出勤したりと正直、あかりには寂しい思いをさせているかもしれない。だから、「ママ」と、からかいながら、安心して貰えるように気を使っているつもりだ。


「いただきます。」
「はい、めしあがれ。」
2人で朝食を摂るのも久しぶりな様な気がする。
ここ最近の朝食と言えば、社内の食堂にあるパンとコーヒーの自販機からメニューを選ぶばかり。そして、いち早く自分の端末を立ち上げ、仕事をしながらの朝食が続いていた。
そんな苦労が、昨晩、ようやく実を結んだ。コンピューターを使った仮想実験が成功し、明日、ようやくマルチを目覚めさせる事を、役員会議にかけ承認を貰う算段がついた。

「しかし、このご飯は旨いなぁ。あ、この鯵の干物、本当にフォホ、ゴホゴホゴホ」
「はい、お茶。」
ずずずうっー、フゥ。く、苦るしかったぁ。
ホント、息が詰まったぜ。
「サンキューあかり」
「はぁー、浩之ちゃん、今日は会社お休みだし、ゆっくり食べても良いんだよ。」
「でもなぁ、ホント美味いんだよ。あかりのメシは。」
「だ、だって、私は、世界一の『浩之ちゃん研究家』なんだからね。(///ω///)」
な、何いってんだよ、あかり。しかも、首から上、真っ赤にして。
コッチだって恥ずかしいだろ?
多分オレも、顔真っ赤なんだろうなぁ。
良し、もう少し、イジメい、いや、お仕置きしてやる
「うっ、あ、朝から、何言っているんだ、あかり。」
「だって、浩之ちゃんも、起きる時に恥ずかしいこと言ったじゃない。そのおかえしだよ~」
「何が恥ずかしいことなんだよ。もう、結婚しているんだから、もういい加減イイだろ?」
そうなんだよなぁ、幼稚園時代からずーっと『ちゃん』付きだったからなぁ。
「だって、浩之ちゃんは、浩之ちゃんだよ?」
「だから、隣に住む幼なじみの浩之ちゃんは止めて、オレの愛する人として、奥さんとして、浩之って読んで欲しいんだ。」
って、何恥ずかしいこと言わせるんだよ。これじゃ、オレの方がハズイじゃないか。
「え、ええっ!」
って、そこで驚くんですか? あかりさん。
「だ、だって…。」
「ひ、浩之ちゃん。凄く嬉しいこと言ってくれるんだもん。」

ぴんぽーん []7(^-^ )

「そ、そんなことで泣くなよ。」
なでなで、なでなで。
席を立って、向かい側に座っているあかりの後ろに回り込んだオレは、泣いている、あかりの頭をなでながら、恥ずかしいけど、耳元へ顔を近づけながら優しく囁いた。
「そんなに泣くな、な。」
なでなで、(p_;)\(^^ )
「う、うん。」

ぴんぽーん ぴんぽーん []7(´ー`)

「あ、ありがとうね。」
なでなで、なでなで
「ああ。でも、コッチこそありがとうだ。」

ピンポン、ピポン、ピポン []7(#`皿)
「セリオ、もう、鍵開けちゃいなさい!」

「ねぇ、浩之ちゃん。私って世界で一番の幸せ者だね。」
「そんなことはないよ」
あかり、本当にそんなことはないんだぞ。それを言ったら、オレの方が世界一の幸せ者なんだからな。
だから、そんな気持ちを伝えたい。
伝えたいからキスで…。

「へー、浩之は、朝からお盛んなんだぁ。」

「「いっ!!」」
「はろ~。浩之!」
「綾香!」「綾香さん。」
だー、何じゃこりゃぁー!
な、何で俺たちの家(←愛の巣とも言う)にいきなり、綾香がいるんだ?
しかも、綾香の背中にセリオが隠れてるし。
む、セリオ?
ははーん、セリオに鍵を開けさせて、突入してきたんだな。
それより、住居侵入罪じゃありませんか?
「それ、違うから。」
「は、はい? 何でオレが考えていることが分かるんだ?」
「浩之ちゃーん、全部しゃべっちゃってるよ。」
「浩之は高校の時から、ほーんと変わらないわねぇ。あと、あかりゴメンねぇ。ちゃんとチャイムは鳴らしたのよ。でも反応ないし。」
「あ、い、いえ。」
「で、セリオに頼んで、お邪魔したら、朝からバカップルしてるから。」
あー、だから、綾香の顔が桜色になっている訳ね。
だからって、新婚家庭に侵入しないで欲しいんですが、オレとしては。あかりもそうだろ?
「綾香さん、それよりもどうしたんですか、こんなに朝早く。」
「ええ、実は買い物に行くから、あかりも一緒にどうかしらって思ったの」
「もしかして、そのお買い物って、あの件の事ですか」
「…」、「…」
な・ん・で、あかりには謝って、オレには謝罪の1つもないんですか。
しかも、あかりもオレスルーですか。そうですか。
「ねぇ、浩之ちゃん、お買い物行ってきて良い?」
って、いきなり、話しをこっちへ振るなよ。ビックリするじゃないか。
「ああ。イイよ。荷物持ちにオレも行こうか?」
「ううん、いいよ。浩之ちゃんは、今日はゆっくりしていて。」
「そうよ、あんた最近、まとな休みを殆ど取ってないじゃない。長瀬主任からも言われてるんでしょ? そんなことだと、会社的にも困るのよ。」
「お、オイ、綾香。家庭内に仕事の話しを持ってくるなよ。って、あかり~。オレを睨むな。」
「そうだよ、浩之ちゃん。それにこれは、とっても大事なことなんだからね。」
なんだか、あかりが凄く睨んでいるし、綾香もいつ技をかけてくるかもしれないって言う闘気が見えるんですが。
「わ、分かったよ。今日は家でゆっくるしてるから。」
「浩之ちゃん、ゴメンね。」
「じゃ、浩之、奥様借りてゆくわね。」
「そこで、奥様言うな!」
「(*・・*)ポッ」

つづく

あとがき
ミク友でもあり、リアル友人でもある、マー坊さんからのリクエストで「To Heart」のSSを作ってみました。
お話し的には、ダメダメですね。作った自分が一番分かっています( ̄Д ̄;;)
未だ、ネタとして最初に思い付いた書きたいところは全く書けていませんので、続きものになってしまいます。
駄文ではございますが、もし、宜しければ、続編にお付き合い頂けると嬉しいです。
では、また続きで

# by ka-neru_japan | 2008-10-02 19:27 | SS (To Heartシリーズ)

嬉しい事に、私の趣味の一部を「見てみたい」と言ってくださる方が、いらっしゃいましたので、mixiよりも、ブログの方が、何かと便利が良いので、カテゴリーとして「SS」を増やしてみました。
また、コメントを記入出来るように、変更してみました。

# by ka-neru_japan | 2008-09-15 15:49 | 更新履歴

ごちゅうい
このお話は、オーガスト作品「夜明け前より瑠璃色な」フィーナED後のSSです。
本家ルートと比べ時系列的にオカシイ(月に帰っている)のは目をつぶってください。w
では、つたない文章ですが、しばらくの間、お楽しみ下さい。


朝霧家の朝は、平日も土日祝祭日も、時間的にはあまり変わりがない。
一家の大黒柱である、さやかの仕事は土日の関係ないからである。
そして、春から初夏へ移りゆく季節に、月王家の王女フィーナがホームステイしてきてからは、フィーナの公務が学園の休みに組み込まれるので、やはり土日は朝から割と忙しい朝霧家なのであった。


  夜明け前より瑠璃色な ショートストーリー
    「仲秋の名月」



~9月14日・朝~

「おねぇちゃん、特濃緑茶準備して置いたよ」
「あ~り~が~と~う~ ま~い~ちゃん」
今朝も、いつもと同じ麻衣と、さやか姉さんのやり取り。
微笑ましいと言えば微笑ましいけれど、姉さん、今日はいつにも増してボーっとしているな。
「ふぅ、おはよう麻衣ちゃん。お茶ありがとうね。」
「うん、おはようお姉ちゃん。」
そんな風景を寝ぼけ眼で見ていた俺に、小鳥のように元気で健気なメイドさん、ミアが
「達哉さん、おはようございます。朝ご飯用意出来てますよ。」
と挨拶をくれた。
「おはよう、ミア。フィーナはもう準備出来ているの?」
「はい、姫さまも、もう少しでこちらへ来られます。」
フィーナは、今日も朝から大使館で公務だ。「これも私が達哉と愛し逢える条件だから」とフィーナは言うけれど、俺にも責任があるんだよな。
そんな困ったような顔をすると、フィーナも困ったような顔が移ってしまうから、難しいけど。
「あら、そんなところでどうしたの、達哉?」
「え、あ、フィーナおはよう。」
「おはよう達哉。どうしたの?難しい顔をしていたようだけど。」
「いや、何でもないよ。所で、今朝は何時ぐらいに、カレンさんは迎えに来るの」
「あと、45分位よ。」
「そうか。じゃ、朝ご飯も準備出来ているから、一緒に食べよう。」
「ええ、いただきましょう。」

慌ただしくも、楽しい家族の朝食を味わっていると、開けっ放しにしてあるリビングから、涼やかな風が吹いてきた。
夏も終わって、秋が来たんだなーと思ったりするのは、こんな時だったりする。
あ、そう言えば、
「麻衣、今晩の準備はどうするんだ?」
フィーナとミアの頭の上にはクエスチョンマークが並んでいる様な表情だが、続けて話を続けていく地球人達3人。
「えーっと、今年はミアちゃんもいる事だし、お団子も作ってみようと思うんだ。」
「それなら、買い物の荷物持ちに行くよ。」
「ありがとうお兄ちゃん、あ、それとススキもお願い」
「分かってる、いつもの河原で取ってくるよ。」
「私も今日は、早めに帰ってこれる予定だから、家族みんなでお月見を楽しみましょうね。」
と、言った姉さんの言葉に、はてなご一行様が取り巻いていた月人2人は"月"と言うキーワードに反応し、月人代表でフィーナが
「お月見、ですか?」
「ええ、フィーナ様。今日は、中秋の名月と言って、この日にお月見をするのが地球の伝統行事なんです。内容は今晩の楽しみにしてくださいね。」
「さやかが、そう言うなら、今晩を楽しみにしているわ。それに、私の公務も今晩は早く終わる予定だから。」
「姫さま、私も麻衣さんと一緒に頑張って、お料理します。」
「頑張ってね、ミア。楽しみにしているわ」
と、会話を楽しんでいたら、ぴんぽーん♪と、呼び鈴が。フィーナのお迎えが来たようだ。
「達哉君、麻衣ちゃん、ミアちゃん、後はよろしくね。」
と、姉さんも出勤していった。

やっぱり今朝も慌ただしい朝霧家の朝が終わった。


~9月14日・夜~
トラットリア左門で、家族揃っての夕食を終えた後、俺と麻衣でお月見の用意をしていたら、姉さんが
「麻衣ちゃん、準備出来た?」
「うん、もう終わったよ。どうしたの?」
「せっかくだから、フィーナ様に地球の文化を味わって貰おうと思って。」
姉さんが持ってきたのは、ススキを染め抜いた秋の着物だった。
「うわー綺麗。でも、どうしたのこれ」
「これはね、琴子さんの着物なの。私も琴子さんの着物を借りるから、麻衣ちゃんも協力してね。」
そうか、母さんの着物だったんだ。となんだか、しんみりしてしまった俺を気遣ってか、姉さんが、
「達哉君、楽しみにしておいてね。」
と、少しおどけた口調で、声をかけてくれた。

「達哉くーん、どう?」
紫かがった藍色に、秋の七草模様が栄える着物を上品に着こなす、さやか姉さん。
「お兄ちゃん、どうかなぁ。」
燃える夕陽のような朱地に金色に輝くススキが美しい絵柄の着物が似合う麻衣。
「た、達哉さん、似合っているでしょうか?」
シックなブラウンながらも、秋の虫がデザインされている着物を着て、オロオロしながらも嬉しそうなミア。
え、姉さんに麻衣にミア。み、みんな着物着ているの?
しかし、母さん。衣装持ちだったんだね。などと、考えていたら
「もう、達哉君。こんな時は、お世辞の1つも言う物よ。」
と、姉さんから叱られ、
「張り合い無いなぁ、お兄ちゃんは。結構苦しいんだよ着物って。」
と、麻衣にまで言われてしまったので、可愛いね、綺麗だね。と言ったが、時既に遅く、女性陣は集まって、達哉糾弾大会が開かれてしまった。
「達哉君には、もう少し女性に対する…。」
「お兄ちゃんは、フィーナさんしか…。」
「達哉様はそれほど…。」
正直あまり聞きたくないので、ススキやお団子、里芋の煮付けなどを飾り付けた、ウッドデッキへリビングから逃げ出そうとしたその時、
「達哉」
「フィ、フィーナ」
そこには、藍地に月とウサギがデザインされた着物を着た、美しき姫君フィーナ・ファム・アーシュライト殿下が立っていた。
「フィーナ、綺麗だ。もの凄く似合っている」
「あ、ありがとう達哉。」
お互い顔を朱に染めながら、もじもじしていたのを、他の女性陣がにんまりとした表情で観察されていたのは、2人は知らない。知らない方が良いでしょう。
「でも、琴子さんの着物を私が着て良いのかしら?」
「いや、母さんも喜んでいると思うよ。こんな可愛いフィアンセに着て貰えるんだし。
それに、父さんも喜んでいると思う。自分の夢が、月への架け橋が見る事が出来たんだから。」
「達哉…。」
その時、フィーナの頬にキラッと光る物が流れていった。
「フィーナ、涙を拭いて。フィーナは笑っている方が魅力的だし、可愛いんだから。」
そう言いながら、フィーナを抱きしめ、背中をポンポンと優しく叩いた達哉だった。
グズグズ「いつから達哉はそんなにも、口が上手くなったの?」
「フィーナ」
「冗談よ。私をうれし泣きさせた、バツよ。」
そして、2人は後ろでヒソヒソ井戸端会議をしている女性陣が目に入らないのか、ウッドデッキに腰掛け、じゃれてくるイタリアンズの頭をさすりながら、片方の手は、お互いの手を繋ぎ、2人の時間を過ごしていた。
「フィーナ、ここから月を見てみなよ。」
「ふぁー、こんなに綺麗に見えるなんて。素敵ね。」
「王宮にいる時は、何もない死の場所だと思っていたのに、38,000km離れて見上げる月はとても神秘的で、楽園のようだわ。」
「そうだね。月はいつ見ても綺麗だけど、それでも中秋の名月は、特に綺麗だよ。」
「でも、あの時の月も、負けてなかったわよ。」
「遺跡の時のか。あの時も2人で眺めていたんだね。」

「中秋の名月を愛でるって言うのは、その美しさを見るだけじゃないんだ。」
「えっ」
「皆で満月の2日前に月を見上げて、満月をもう一度見上げる為に、もう1度、異性を誘う地方もあるんだよ。」
「だから、人と人の間柄という意味の"仲"の字を使って『仲秋の名月』って言う事もあるんだ。」
「た、達哉 (///ω///)」
「フィーナ、もう1度2人でお月見をしよう。(///ω///)」
「う、うん」
そして、2人の距離はゼロになって…。

「あ、あのー、フィーナ様、達哉君?」
「「えっ!」」
「2人の仲が良いのは、大変結構なんですが、そう言った事は、二人っきりの時に。特にウチは、年頃の女の子もいる事ですし。」
「「ドキドキ」」
ハァ。
やっぱり朝霧家は、朝も夜も忙しいようです。


End



あとがき
大変お見苦しい物を、上梓してしまいました。スミマセン。
本来、この時期は、フィーナは月に、達哉は地球にいるはずなんですけど、お月見と言う事で、強引にこの設定にしてみました。
また、「仲秋の名月」の仲秋の意味ですが、本来は、秋を3シーズンに分けた時の真ん中のシーズンを指しますので、お月見をするのは「中秋の名月」が正しくなります。
ありがとうございました。

# by ka-neru_japan | 2008-09-15 14:59 | SS (夜明け前より瑠璃色な)

いよいよ、後10日後に迫ってきた、栗林みな実さんの全国ライブツアーが、名古屋から始まります!

そこで、既に参加表明されていらっしゃる方も多数いらっしゃいますが、



内容は、とっても簡単。
ライブ中に「Love Jumpが演奏されたら、赤いサイリュームを振っちゃおう」って企画です。
元ネタは、Webラジオでのジョイさんの発言から。
アニメーション""のOP「Love Jump」だから、赤=紅とは良いじゃないですか!
私も、この企画に賛同して、紅いサイリュームを何本か持参して、周りで持っていない方におわけしたいと思っています。
私個人は、ピンクのネオン管紅い誘導灯で参戦します。w

でも、ゆるーい企画なので、賛同していただける方だけって事で。


2年ぶりのライブですが、今回はどんな仕掛けがあるのか、とっても楽しみです。
かーねるは、毎度おなじみ"心の友U氏"と、名古屋公演、静岡公演に参加します。
しかも、今回も医師からのお墨付きで。w
処方箋に書けるぐらい、ライブは良く効く薬だそうです。

では、みな実さんFANのみなさん、会場で楽しみましょう!

# by ka-neru_japan | 2008-09-10 23:40 | 思い付くままの事

ゴチャゴチャいじっていたら、遂に動くパソが1台になってしまった。
これは本当にマズイ。
何かあったら、何にもできなくなる。
しかし、煩悩の赴くまま、ライブに行ったり、コミケに逝ったりと散在してるから金がない。←自業自得とも言う。

取りあえず、まともに動くパソが3台は確保しておきたい。
そうなると、メインで使っているPCは、メール&ゲームが主力だから、WinXP-SP2(Vista不可)で動く、そこのそのタワ-orフルタワーで500WクラスのPCを新造するしかないのか。で、今使っている、メインPCから部品取りして、シンプルな妖しいマシンを組み立てるか。
で、非常用マシンを1台。
有る程度良い物ができるなら、焼きマシンにしたいところだが。
どちらにしても、HDDは余っているし、OSも有るから、何とかなると思うんだけど。
でも、メイン新造機は、新品にしたいなぁ。
うーん。コミケに10万は出せるが、パソに10万はポンッと出ない、私の金銭感覚は、やっぱり壊れているか、こなた並か。

# by ka-neru_japan | 2007-09-06 00:45 | 思い付くままの事

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